ＰＩＮＫＦＯＸ　強制収容１０

その日の夜、宿舎に戻ったリョウタたちはいつもはいる美智子がいない事に心配していた。
「・・・・・アイツに連れて行かれたんだろう・・・」
「・・・・・・・・・・」
「もう・・・戻ってこれないかも知れないよ、美智子ちゃん・・・・」
沢山の囚人たちは一箇所に集まり、口々に目測を立てていた。
アイツとは藤堂の事である。
戻らないかも・・・というのは実は彼に連れて行かれてその後無事に戻ってきた人間は皆無に等しかったから
である。
そのまま消息不明、ひどいのだとみなの前で磔にされて惨殺・・・たとえ助かったにしても気がふれ、精神的に
おかしくなって戻ってくるなどまとめな過去が探せないのだ。
事実囚人たちの中には気のふれたままの人も混じっていて、よほどの厳しい拷問を受けた結果なので
あろうが・・・
（今なら・・・）
美智子と会ってまだ３日目の夜。
ショックだが、だが・・・・忘れる事も出来るだろうが彼らにとって彼女はあまりにもインパクトが強すぎて決して
忘れる事件のできない存在になってしまっていたのだ。
なんの楽しみのない彼らが久しぶりに感じた恋に似た感情・・・毎日に希望が持てたこの数日間を思うと胸が
痛くとても切なかった。
これは囚人たちを束ねる藤堂が最も恐れた感情でもある。
魔性の女かどうかは分からないが彼女は確かに普通の女の子とは違う何かで男たちを虜にしつつあった。

やばい・・・

自分の身、そして囚人たちの反乱、たった一人の女性がこの島１つに革命を起こそうとしていた。
数日彼女を見、ついに藤堂は彼女を自分の部屋に招きいれたのだ。
藤堂は少しドキドキしていた。
それは護衛たちに言わせてドレッサー室に彼女を通してあるからだ。
そこにはシルクのドレスやフリフリの勝負下着、スチュワーデスやメイドのコスチューム、スクール水着など
豊富なコスチュームがありどれでも好きなものを着させてここへよこすよう支持がしてあったから・・・
（・・・見ものだな・・・ピンクフォックス、くくく・・・）
果たしてそこに入ってきた美智子にはさすがの藤堂も少し驚いた。
それは彼女の着てきたコスチュームがなんと学生服だったからだ。
しかも同人誌、「胸いっぱいのディジー」シリーズで彼女が着用している白いブラウスに赤いネクタイ、紺の
フレアスカート、そしてひざ下モモまであるフリルつきの白いソックス（昔はあったが今は・・・作者は美智子
ソックスと影で命名）にコゲ茶のローファーといういでたち。
しかも学生カバンのおまけつきだ！！
さすがの藤堂も大笑いだ。
「！・・・いや！こりゃまいった（笑）！！そ、そうくるとはねぇ、ヒャッハハハーッ♪いや、失礼、よぅく似合っているよ可愛らしい（歓喜）！！」
腹を抱えてニヒルな藤堂は激しく笑い転げた。
なんせピンクフォックスなのだ。魔性の女、なのだ。
男を体で落とす為に絶対薄いシルクドレスとかを着込んで艶っぽく挑発してくる！！
そう思っていただけにびっくりなのだ。
自分を悩殺し虜にしこの場を逃れる・・・そういう藤堂の想定はまんまとはずれた訳だ。
「・・・・まあ、座りなさい。ピ・・いや、馬渕美智子・・というべきかなぁククク」
「・・・ありがとうございます藤堂先生」
「と・・・（苦笑）全くおもしろい女だな君は。呼ばれた意味分かってんのかい？」
「分かりません」
（ふ・・ん、そこの知れない女だな・・・・）
パチンっと両手を叩くと護衛が紅茶を持ってきてゆっくりと机に置いた。
「まあ飲みなさい・・・・パフォーマンスは分かった。命乞いも結構だ。私としては君の持っている某政治家の
重要機密を全て聞きたい・・・ただそれだけだ。私は嘘は言わない。言えば前の条件をのもうじゃないか・・・」
言うとコトッ・・と机にテープレコーダーを藤堂は置き、スイッチを入れる。
が、美智子は藤堂の瞳をジ・・・っと見つめ意外な事を言い出した。
「・・・・・・言えば、言えば今この島にいる囚人の人たちを自由にしてもらえますか？」
「・・・・・・・・・・・・・・それは無理だ。他に・・・条件はないのか？」
「・・・それだけです。ならば言えません。」
「む・・・・・・・・・・・・・・ふーむ」
腕組をし始める藤堂。
「・・・・・・言う意思があるのに・・・何故囚人たちなんだ？あんな奴ら助けてもしょうがないだろ？金をやるぞ
？裏で警察に手をまわせば君はもう自由だ！！普通そっちだろ！？」
「私は・・・あの人たちがそんな悪い人たちには見えません。私は学生時代、ひどいイジメにあって学校中の
生徒たちの前で裸にされました（詳しくは同人誌、胸いっぱいのデイジーにて・・・買ってネ！！）」
「知ってるよ。災難だったな・・」
「でも私も一緒なんです。産業スパイとなり守ってきた体を武器に逆に数え切れない数の男性たちを騙して
大事なもの奪って・・・お金だけじゃない。愛情や家族や、あるいは命さえも・・・」
「何がいいたいんだピンクフォックス君！」
「悪いことをしました。今凄く後悔しています。でもそれは彼らも一緒だと思うんです。こんな私に、私に対して
も凄い心優しい人たちなんです。だから私は、美智子は彼らと昨日の晩、家族に・・・なりました」
「へーへー」
「そんな父さんやお兄ちゃん、あるいは弟たちを裏切って自分だけが島を出たいとは・・・美智子思えません！！だから・・・だから彼らも許してくれるなら・・・全て話します・・・それだけです」
「・・・・・・・・・その格好は何故に選んだ？私を骨抜きにする為ではないのか？ん？」
「決意です。私はもう・・・・もうピンクフォックスではありません。心は学生時代の純粋で何も知らない
馬渕美智子なんです。負けません。たとえ何があったとしても・・・」
藤堂は目をつむり考えやがて重い口を開く。
「・・・・・・・分かった。言えば言うとおり、奴らを全て自由にしてやる。約束しようじゃないか。ただし・・・」
「・・・・言って下さい」
「君はそう・・死んでもらう事になる。正確には黒奇島といってここよりもっとひどい島に移ってもらう。その島の
意味が分かるかね？」
「・・・・・・・・・・・」
「ここで用のなくなった人間を体よく始末する為の島なのだよ。名前もない。番号で呼ばれ・・・毎日必ず死人が
出る。この島が重要犯罪人の最終地点では実は・・・なかったのだよ！！わっはははっ！！！どうかね！？
今なら条件変更も出来るぞ（笑）！！」
が、ためらいもなく彼女は答える。
「分かりました。黒奇島へいきます。」
「・・・ピンクフォックス。もうちょっと頭が利く女だと思っていたがな・・・残念だが本当にこれでお別れだな。
魅惑の産業スパイ、名もない孤島で死す。クッククク！ちなみに」
窓越し夜空に目をやり藤堂は美智子に言う。
「出発は明日、誰もいない早朝だ。今晩時間ほやるから奴らに会ってたっぷりとボディ・ケアしてきたら
どうだ（苦笑）！？」
だが、彼女は結局夜、誰とも会わずに黒奇島を目指す事になる。
会えば・・・会えば未練が残る。
魔性の女といわれ類稀なボディーと美貌で大物ＶＩＰを魅了してきたピンクフォックスこと馬渕美智子はその
体をついに使う事なく島を出て行くのだ。
自らの欲望の為に生きたピンクフォックスが自らの身と引き換えに沢山の人々を救った・・・のだがこの後
この島では更なる衝撃が走る事になるのであるがそれはまだまだ先のお話である。

「さよなら・・・」

黒い潮風にあおられながら美智子は小さな船に乗り家族のいる愛すべき島をあとにした・・・

　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　１１に続く